e2PARK MAGAZINE

海底耕運

水谷 優太

海のことを知るために企業にインタビュー!

海遊館 / 大阪府立環境農林水産総合研究所水産研究部

海域環境グループ

ZOOM インタビューの様子

大会の感想

心に残った言葉

一度失った自然のバランスは人間の力では元通りには戻せない』

 

みんなで大阪湾を守ろうと思いました!

海遊館からの取材メール

水谷 優太 様 

こんにちは。海遊館の北藤と申します。優太くんは自分でプログラミングをしてゲームを 作ってしまうとはすごいですね。また、大阪湾の環境問題をゲームを通してみんなに知って もらい、少しでも環境を良くしようとする考えはとても良い事だと思います。 

 

優太くんが興味をもっている、「海がきれいになりすぎて魚が少ない。」という問題は、人 間が自然と向き合うときに忘れてはならない2つの大切なことを教えてくれていると思い ます。その一つは、「人間もふくめてあらゆる生き物は複雑に関係しあって生きている」と いうこと、もう一つは、「私たちはその関係の一部しか知らない」、まだまだ未知のことだら けで特に海の中の事は調べにくいためよくわからないのです。この2つの事について、優太 くんの質問にそって少し詳しく説明します。 

まず、「きれいな海」とは別に「豊かな海」という言葉があります。 

 

「豊かな海」では魚やエビや貝など(これらをまとめて魚介類と言います。)がたくさんと れます。なぜたくさんとれるかとい言うと、その魚介類が生きるための餌が十分あるからで す。例えば、マグロがたくさんいる場合、イワシなどのマグロの餌となる小魚がたくさんい るはずです。さらにイワシが生きるには、イワシの餌となるプランクトンがさらにたくさん いるはずです。ではプランクトンの餌は? これが優太くんの調べた「栄養」です。 

 

栄養(植物に与える肥料のようなものと考えて下さい。)が多いとまず植物プランクトン が増え、次に動物プランクトンも増えます。結局、「豊かな海」=「栄養が多い海」となり ます。ここで、前に述べた一つ目の大切なことを思い出して下さい。「生き物は複雑に関係 しあっている」ということがこの例でわかると思います。他にも複雑な関係がたくさんある ので調べてみて下さい。 

では、栄養が多ければ多いほど良いのでしょうか? 大阪湾では、今から 60~70 年前ご ろから海の開発が急速に進められ、海辺にたくさんの工場が作られ人口も増えました。 この頃、工場や家庭から使い終わった汚れた水がほとんどそのまま川に流され、海に流れ込 んでいました。汚れた水には植物プランクトンの栄養となる成分がたくさん含まれていた ので、海は「豊かな海」になったのですが、あまりに栄養が多すぎたので海の水質が悪くな 、「赤潮」が出て魚介類が死んでしまうようなってしまいました。この時、多すぎた栄養 は海底にたまりました。人間はこの時になってやっと、「これではいけない」と知ったので す。そこで、法律を作って工場や家庭から流す汚れた水は一定の水準まできれいに浄化して 川に流すように決めました。そして、下水道などの浄化施設が整備されその効果があって、 汚れた海は「きれいな海」に生まれかわりました。しかし問題がおこりました。「きれいな 海」には「栄養」が少ないのです。栄養が少ないと魚介類が増えない理由はわかりますね。

 

ここで前に述べた 2 つ目の大切な事を想い出して下さい。「まだまだ未知のことだらけ」で す。「海の栄養が増えすぎたから、少なくすれば問題は解決する」というわけにはいかない のです。人間が考えるほど自然の仕組みは単純ではなく、複雑にからみ合う未知の関係性が まだまだ存在します(生き物にもまだ未知の種類がたくさんいる!)。一度失った自然のバ ランスは、人間の力で元の通りには戻せない事を知って下さい。 

 

優太君のゲームのコンテンツに使う、「くまでのようなもので海底をかき回す」という作 業は、「海底耕耘」とよばれ、実際の海で行われています。優太くんの調べたように海底に たまった栄養を水中に舞い上がらせて、栄養を吸収して増える海藻のノリやプランクトン を増やそうとするものです。前に書いたように、栄養が海底にたまっていますので、かき混 ぜる事で確かに栄養が水中に出てプランクトンが増える効果もあるようです。しかし、栄養 が出てくるのは短期間なので、「魚介類を増やす効果があるのか?」「掘り起こした海底の様 子や生き物はどうなっているのか?「」栄養と一緒に有害な物質が出てこないのか?」「ど んな場所でどのようにどれだけ耕耘すれば効果的?」などまだわからない事が多いのです。 

以上で説明を終わりますが、優太くんの知りたい事に答えられたどうかはわかりません が、様々な資料や文献を調べてさらに深く学習して下さい。その上ですばらしいゲームを作 って下さい。みんながそのゲームを通して自然環境の大切さやどうすれば問題解決できる のかを考えるツールになる事を願っています。がんばれ! 

 

海遊館 北藤